自邸 三六九庭(みろくてい)
今回は自らの鑑賞用として、そして日本庭園の施工をご検討されているお客様のために、自邸内に作庭をいたしました庭園のご紹介です。有効面積は九坪とそれほど大きくはございませんが、当研究室の技術を多く折込んだ庭園となっております。
目次
「作庭のテーマについて」
本庭は、辰巳(南東)の方角に三六九という数で構成した蓬莱神仙(ほうらいしんせん)の世界観を山水画的枯山水(さんすいがてきかれさんすい)で表現したものです。
「蓬莱神仙(ほうらいしんせん)」とは古く紀元前の中国,燕(えん),斉(せい)地方で起こった土着信仰で,東方海上に蓬莱神仙世界※1があるとし,蓬莱(ほうらい),方丈(ほうじょう),瀛州(えいじゅう)の三島などが想定され、これらの島は神仙島ともいわれ,そこには宝物や不老不死の仙薬が蔵されていると説かれました。このような説は,方士(ほうし)という人々によって広められ,秦始皇帝(しんのしこうてい)などは多くの方士に仙薬を求めさせました。一説に,この蓬莱神仙世界は,日本であるとも言われています。以後中国においても日本においても,庭作りのテーマとして広く用いられています。
用語工法を中心とした、より詳しい解説は下記ページよりご覧いただけます。
「石組(いわぐみ)について」
中央は十二石組の蓬莱(ほうらい)蓬莱島は平面地割りを抽象化した亀にかたどり、左手に斜立石(しゃりっせき)の亀頭石(きとうせき)を配する峻険(しゅんけん)な石組です。
右側は九石組の方丈(ほうじょう)方丈島は、室町様式の低く据えた石橋と橋挟石(はしばさみいし)、手前は出舟形式の舟石(ふないし)、更に手前は遠近法を使った岩島(がんとう)です。左側は六石組の瀛州島(えいじゅうとう)古来中国では日本の国を東瀛(とうえい)と呼んでいたことから六石組の瀛州(えいじゅう)としました。
瀛州島は、蹲踞(つくばい)形式に全て平天石(へいてんせき)で組み、豪華な前石(まえいし)を台石(だいいし)で浮かせ、海の下に埋設した水琴窟(すいきんくつ)は筧(かけひ)からの水量によって音の変化が楽しめます。尚、台石は石橋の下が二石、前石の下が四石で全て合わせると三十三石です。
上記三つで三神山(さんしんざん)となります。
「垣・植栽他について」
植栽は、赤松の天目松(てんもくしょう)を三本とし、地面は自宅や近所で集めたコケ張り六山と水を表現した白川砂です。
竹垣は南側九面と東側六面の計十五に分けた創作的な文字垣(もじがき)で、施工者のサトル・ヒロシ・ヤエモンの名が隠れています。
北側の市松垣(いちまつがき)は、竹の割間(わりま)が二十七升、杉皮が三升の構成で、割竹の幅に変化を持たせ、屏風の様に折り込みます。玉縁(たまぶち)の笠竹(かさだけ)や杉皮の遊びを入れ、出入り口の杉皮垣(すぎかわがき)は割間に一二三(ひふみ)を用い押縁(おしぶち)の割竹は全部で十二本です。西側の袖垣(そでがき)は三枚、三本飛ばしの網代垣(あじろがき)、押縁はスハマと削ぎ落としです。
この庭園の最大の特色は、風を回し、隅を開けることでゴミが溜まらず、夏は天然の涼風が吹き込みます。また、蹲踞形式は手水鉢(ちょうずばち)を用いないことから水面に落ちる水の音がしませんので水琴窟の音が鳴り響き、また、やぶ蚊対策にもなります。この庭が、多くの来客者様の鑑賞となれば幸いです。
※参考文献:岩波 日本庭園辞典
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