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水琴窟と筧の作り方 〜日本庭園(枯山水・石庭)の作り方 その3〜

瀛州島全景

【蓬莱神仙思想の庭 瀛州島】


①瀛州島(えいじゅうとう)

十川日本庭園研究室です。
今回はその2に続きまして、水琴窟の作り方を中心に「蓬莱神仙思想の庭 三六九庭」の「瀛州島」の製作過程をご紹介させていただきます。

用語集:蓬莱神仙思想  タップ又はクリックすると説明が読めます。
蓬莱島・蓬莱山ともいう。中国の神仙思想で、方丈・瀛洲とともに三神仙島とされた。東海のなかにあって神仙が住み、不老不死の地と考えられた仮想の海島で、巨大な亀の背中に載った島との解釈もあった。

中国では、紀元前2世紀に前漢の武帝が太液池に蓬莱をはじめとした神仙島を築いたことが『漢書』に見え、さらに6~7世紀に築造された唐の大明宮の太液池でも蓬莱島が築かれるなど、中国の皇帝庭園ではきわめて重要な要素であった。

神仙思想は日本には百済などを通じて飛鳥時代に伝えられ、飛鳥京都跡苑池遺構の南池の島などは、蓬莱をモチーフとしていた可能性がある。奈良・平安時代にも、園池の島が、蓬莱などの表現を意図したものであることも少なくなかったと見られ、平安後期の鳥羽離宮庭園の園池については「或いは蒼海を模して島を作り、或いは蓬山を写して巌を畳む」(『扶桑略記』)といった表現が見られる。

それ以降も園池の島を蓬莱と見立てる風潮が続き、江戸時代には多くの園池で蓬莱島が築かれることになる。蓬莱が海中の島であることに鑑み、橋を架けないことを原則としたが、回遊などの便宣上架橋されることも少なくなかった。また、マツを植えるのが通例で、蓬莱と亀の関係から、亀島との習合も見られる。

日本庭園(枯山水・石庭)の作り方 その1、その2をお読みになっていない方はこちらからどうぞ。

瀛州島は水琴窟(すいきんくつ)と筧(かけひ)を中心とし、茶庭の要素である蹲居(つくばい)形式となります。

用語集:蹲居(つくばい)形式  タップ又はクリックすると説明が読めます。
手水鉢(ちようずばち)には立ち使いと蹲(つくばう)形式とがあるが,露地ではもっぱら蹲踞の形式が採り入れられている。鉢を低く据え,蹲って使うところからこの名がある。

手水鉢を中心に,左右に手燭石(てしょくいし)と湯桶石(ゆおけいし)を据え,前石を置いた構成を通型とし,付近には鉢明りの灯籠が配される。茶事に臨み心身を清浄にし,〈世塵のけがれをすゝぐ〉(《南方録》)ための,露地におけるもっとも重要な施設である。

②水琴窟製作の事前準備

工法の説明に入ります。先ずは水琴窟の作り方から。水琴窟は一昔前には「秘伝の技」などと言われていましたが、蓋をあければ構造は極めてシンプルなものとなっています。しかし、カメの選定や穴を開ける場所や大きさ等、作り手の経験に負う部分が大きく、意図した音を出すとなると難しい排水装置です。
また、私自身も何度も経験しました、巷に紹介されているものの多くは「浸透式」といって、流れ込んだ水をそのまま土中に染み込ませる形式が多く、水と一緒に入り込んだ土が詰まり、数年に一度メンテナンスが必要となります。
しかし現在は上記の理由より、施工後も整備管理に出来るだけ手のかからない方法として、パイプを側面に設置して排水する方法を多く採用しています。
今回も写真中心の解説となりますが、写真の中に製作上の多くのヒントが隠されていますので、注意深くご覧になってください。今後の作業の参考にしていただければ幸いです。

三六九庭における実際の水琴窟の動画です。水琴窟の音が確認できます(音が出ますので、ご注意ください)カランカランという音の中に時々入る「ポン」という音が二つのカメを使用した効果です。

水琴窟の作り方(概要)については過去に一度投稿しています、下記リンクよりご参照ください。


水琴窟周りを整地します。

沓脱石、前石、カメを仮置きしますが、後に沓脱石はバランス上撤去します。

陶器用のダイヤモンドドリルでカメに穴を開けます。

幅と深さを計算し穴を掘ります。掘りすぎ注意。

砕石を打ち、輾圧(てんあつ)後に水をかけます。

カメの側面に排水用の穴を開けます。側面に開ける理由は、ゴミを外に流すためです。

③水琴窟用カメの埋設・仕上げ

ワイヤーメッシュを入れ、モルタルを打ち、カメの底にシリコンを塗り据え付けます。

カメに塩ビ管を差し込みます。メモリを付けると正確に差し込めます。また、隙間をシリコンで埋めます。

周りをモルタルで固めます。

音の変化を楽しむために微妙に高低差を付けます。

グリ石で固めますが、カメとの接地面が少ないほうが反響音が良いです。

更に砕石を打ち、水をかけて輾圧します。あまり強く突くとカメが割れるので注意が必要です。

セメントと砂を混ぜて、水を加えない空練りを均し、サッと水をかけます。

空練りは撤去が容易です。台石(だいいし)や鏡石(かがみいし)を据え付け後に更にモルタルを打ちます。

④水琴窟周りの石組み

水琴窟周りの石を搬入します。

石を水洗いします。石組は、バランスが大事なので仮置きします。

また、カメを破損しないようにシート、砂、コンパネ、角材等で養生します。

前石を台石で浮かせて、蹲踞(つくばい)風に石組をします。大切なのは、落ち葉が溜まらないように、最適な位置関係で石組を構成することです。

全体のバランスを確認して、空練りを砕きながら鏡石となる平天石(へいてんせき)を据え付けます。

用語集:鏡石(かがみいし)  タップ又はクリックすると説明が読めます。
手水鉢(ちょうずばち)の前に置く石。※利休客之次第(1587)「手水鉢の前のすて石をかがみ石と云也」
用語集:平天石(へいてんせき)  タップ又はクリックすると説明が読めます。
天端が平で高さのある石を、庭園用語で「平天石」と呼ぶ。

鏡石の角度を調整して、添石(そえいし)を据え付けます。

水琴窟に根が入り込まないように裏側に枝垂れアカマツを植えます。植栽は後で根張りを出すため高くします。

全てが平天石の蹲踞風石組みです。

排水枡周りの整地をします。ホコリの多い地域なので化粧砂利の下にモルタルを打たず川砂を均します。

⑤筧(かけひ)周り

用語集:筧(かけひ)  タップ又はクリックすると説明が読めます。
蹲居(つくばい)は、日本庭園の添景物の一つです。もとは、露地という茶庭に置かれ、茶室に入る前に手を清め、口をすすぐために置かれた背の低い手水鉢(ちょうずばち)に役石を添えたものの総称です。一般的には、「手水鉢」、手水鉢手前に手を清めるときに乗る「前石」、左右に手燭を置くための「手燭石」と湯桶を置く「湯桶石」(この3つを役石と呼ぶ)、手水鉢と役石に囲まれた「水門」で構成されます。這いつくばるように身をかがめて手を洗う様から、「つくばい」と呼ばれるようになりました。また、手水鉢に水を導く竹や木でできた樋を、筧(かけい)と言います。

筧の作り方についても過去に一度投稿しています、下記リンクよりご参照ください。

筧用の水道管は建物の際を通します。また、室内から手の届く位置にコックを設置します。

筧の位置に立ち上げます。横樋(よことい)に入る先端は後でホースに変えます。

今回はこちらで終了です。水琴窟の製作、特にカメの設置においては繊細な技術が要求されます。ご自身で色々と試されると、勘どころがつかみやすいかと思います。


次回の「日本庭園の作り方 その4」は苔貼りと竹垣製作となります。下記リンクよりご覧ください。

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十川 洋明(トカワ ヨウメイ)

17歳で庭の世界へ飛び込み、その素晴らしさに魅了されました。造園会社数社で修行を積み、1996年に「作庭処 彌右エ門」(現 十川日本庭園研究室)として独立。以来、個人邸の作庭工事を手がけながら、古庭園に興味を持ち京都を初め全国の庭園を見てまわり研鑽を積んでいます。千葉県山武市在住。

 

<主な経歴>
1998年 重森三玲記念館庭園施工
1999年 靖國神社神池整備工事参加
2001年 靖國神社苑内常駐管理責任者
2004年 中国蘇州市に日本庭園施工

 

通常業務以外に日本庭園の古式工法の検証及び技術指導・講演も行っております。詳しく公開されることがなかった技術を、様々な方々にご提供できればと考えております。ご質問・ご相談等、お気軽にメールにてお問合せください。

 

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