【水琴窟と筧の作り方】 〜日本庭園(枯山水・石庭)の作り方 その3〜
目次
①瀛州島(えいじゅうとう)
十川日本庭園研究室です。
今回はその2に続きまして、水琴窟の作り方を中心に「蓬莱神仙思想の庭 三六九庭」の「瀛州島」の製作過程をご紹介させていただきます。
日本庭園(枯山水・石庭)の作り方 その1、その2をお読みになっていない方はこちらからどうぞ。
瀛州島は水琴窟(すいきんくつ)と筧(かけひ)を中心とし、茶庭の要素である蹲居(つくばい)形式となります。
②水琴窟製作の事前準備
工法の説明に入ります。先ずは水琴窟の作り方から。水琴窟は一昔前には「秘伝の技」などと言われていましたが、蓋をあければ構造は極めてシンプルなものとなっています。しかし、カメの選定や穴を開ける場所や大きさ等、作り手の経験に負う部分が大きく、意図した音を出すとなると難しい排水装置です。
また、私自身も何度も経験しました、巷に紹介されているものの多くは「浸透式」といって、流れ込んだ水をそのまま土中に染み込ませる形式が多く、水と一緒に入り込んだ土が詰まり、数年に一度メンテナンスが必要となります。
しかし現在は上記の理由より、施工後も整備管理に出来るだけ手のかからない方法として、パイプを側面に設置して排水する方法を多く採用しています。
今回も写真中心の解説となりますが、写真の中に製作上の多くのヒントが隠されていますので、注意深くご覧になってください。今後の作業の参考にしていただければ幸いです。
三六九庭における実際の水琴窟の動画です。水琴窟の音が確認できます(音が出ますので、ご注意ください)カランカランという音の中に時々入る「ポン」という音が二つのカメを使用した効果です。
水琴窟の作り方(概要)については過去に一度投稿しています、下記リンクよりご参照ください。
【お知らせ】イメージ工房様より当研究室の水琴窟動画を公開していただきました。イメージ工房様の水琴窟ページは下記ボタンより。
[Notice] The image studio showed us a picture of the Suikinkutsu cave in our laboratory. Click the button below for the image studio’s Suikinkutsu page.
水琴窟周りを整地します。
沓脱石、前石、カメを仮置きしますが、後に沓脱石はバランス上撤去します。
陶器用のダイヤモンドドリルでカメに穴を開けます。
幅と深さを計算し穴を掘ります。掘りすぎ注意。
砕石を打ち、輾圧(てんあつ)後に水をかけます。
カメの側面に排水用の穴を開けます。側面に開ける理由は、ゴミを外に流すためです。
③水琴窟用カメの埋設・仕上げ
ワイヤーメッシュを入れ、モルタルを打ち、カメの底にシリコンを塗り据え付けます。
カメに塩ビ管を差し込みます。メモリを付けると正確に差し込めます。また、隙間をシリコンで埋めます。
周りをモルタルで固めます。
音の変化を楽しむために微妙に高低差を付けます。
グリ石で固めますが、カメとの接地面が少ないほうが反響音が良いです。
更に砕石を打ち、水をかけて輾圧します。あまり強く突くとカメが割れるので注意が必要です。
セメントと砂を混ぜて、水を加えない空練りを均し、サッと水をかけます。
空練りは撤去が容易です。台石(だいいし)や鏡石(かがみいし)を据え付け後に更にモルタルを打ちます。
④水琴窟周りの石組み
水琴窟周りの石を搬入します。
石を水洗いします。石組は、バランスが大事なので仮置きします。
また、カメを破損しないようにシート、砂、コンパネ、角材等で養生します。
前石を台石で浮かせて、蹲踞(つくばい)風に石組をします。大切なのは、落ち葉が溜まらないように、最適な位置関係で石組を構成することです。
全体のバランスを確認して、空練りを砕きながら鏡石となる平天石(へいてんせき)を据え付けます。
鏡石の角度を調整して、添石(そえいし)を据え付けます。
水琴窟に根が入り込まないように裏側に枝垂れアカマツを植えます。植栽は後で根張りを出すため高くします。
全てが平天石の蹲踞風石組みです。
排水枡周りの整地をします。ホコリの多い地域なので化粧砂利の下にモルタルを打たず川砂を均します。
⑤筧(かけひ)周り
筧の作り方についても過去に一度投稿しています、下記リンクよりご参照ください。
筧用の水道管は建物の際を通します。また、室内から手の届く位置にコックを設置します。
筧の位置に立ち上げます。横樋(よことい)に入る先端は後でホースに変えます。
今回はこちらで終了です。水琴窟の製作、特にカメの設置においては繊細な技術が要求されます。ご自身で色々と試されると、勘どころがつかみやすいかと思います。
続きの「日本庭園の作り方 その4」は苔貼りと竹垣製作となります。下記リンクよりご覧ください。
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